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『万引き家族』の是枝裕和監督がリリー・フランキーを絶賛「バケモノです」

2018年06月09日(土)配信

『万引き家族』(公開中)で、第71回カンヌ国際映画祭パルムドールの栄誉に輝いた是枝裕和監督に単独インタビュー。日本人監督の同賞受賞は、97年の今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶりの快挙だった。共に映画祭に参加したリリー・フランキーは、公式上映後のスタンディングオベーションで男泣きし、受賞時は「驚きと感動でじんましんが出た」とのこと。是枝監督はそんなリリーに“バケモノ”という最上級の賛辞を送る。果たしてその真意とは?祖母・初枝(樹木希林)の古い一軒家に身を寄せ合って暮らす家族5人。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子・祥太(城桧吏)は、生活のために2人でよく万引きをしている。ある日彼らは、団地の廊下で凍えていた少女・ゆり(佐々木みゆ)を放っておけず、家に連れて帰る。妻・信代(安藤サクラ)は呆れるも、傷や痣だらけの少女を見て悲惨な状況を察し、そのまま彼女の面倒をみることに。リリーは、是枝監督が第66回の同映画祭で審査員賞を受賞した『そして父になる』(13)をはじめ、『海街diary』(15)、『海よりもまだ深く』(16)と3本の是枝組を経て、本作で遂に俳優のクレジットでトップに躍りでた。是枝監督が治役をリリーにオファーしたのは、『そして父になる』でリリーが演じた、子煩悩で味のある電気屋のオヤジ像がとても印象深かったからだそう。今回の治も、ちょっぴり小ずるいけど憎めないお調子者の父親だが、そこに哀愁というスパイスが加わり、非常に人間味に溢れた父親像となった。是枝監督はリリーについて「お芝居というものとはちょっと違う感じの仕草をされる。リリーさんは、そういう演技が絶妙に上手いんです」と感心する。「『そして父になる』の時に希林さんがリリーさんに『あんたみたいなのが出てきたら、私たち俳優は困るのよ』と言っていました。どういうことかと言うと、『プロじゃない』というスタンスを確保しながら、『なにもしないことが映画においては一番強い』という一番難しいことをさらりとこなしてくる。彼はまさに “バケモノ”なんです」。『そして父になる』がハリウッドでリメイクされることになり、是枝監督はその映画を手掛けるスティーヴン・スピルバーグに会いに行ったが、そこでも開口一番にリリーの話題を切りだされたとか。「最初にスピルバーグ監督と握手をして座ったあと、『彼は一体何者だ?役者なのか?』と聞かれました。あのスピルバーグから見ても、リリーさんの有り様は異質だったらしくて。僕は、『彼はイラストレーターで、エッセイも書いていて、お芝居もするけど、役者じゃないのかもしれない』と言いました。そういう不思議なところがリリーさんのおもしろさだと思います」。リリーが俳優として一気に注目を浴びたのは橋口亮輔監督作『ぐるりのこと。』(08)で、彼は鬱病の妻を支える夫を演じ、第51回ブルーリボン賞新人賞などを受賞した。もともと自身の強烈な個性をミックスした名バイプレイヤーとして活躍していたリリーだが、第37回日本アカデミー賞では、『そして父になる』で最優秀助演男優賞を、『凶悪』(13)でも優秀助演男優賞をW受賞するなど、すでに俳優として高い評価を受けていた。しかし是枝監督はリリーについて「世間的には役者として捉えられているけど、彼自身はそうじゃない気がするんです」と言う。「リリーさんについては “役者”という表現すら違う気がする。きっと彼は、なにかになってしまうことを良しとしない。偉くなっていかない感じがいいのかなと、僕は思っています」。本作ではリリーもすばらしいが、是枝組初出演の安藤サクラや松岡茉優、リリーと同じく是枝組の常連にして名女優の樹木希林、子役の目利きである是枝監督がオーディションで選んだ城桧吏と佐々木みゆと、“万引き家族”を演じた6人全員の個性がそれぞれに際立っている。彼らは世間的に見れば、社会の底辺にいる弱者たちだ。でも、1つの部屋で集っている彼らの明るい表情を見ると、心がとても満たされているという印象さえ受ける。これまでいろんな形で“家族”を描いてきた是枝監督に、「家族のあるべき姿とは?」と問いかけてみると「答えはないんじゃないですか。わかっていたら撮らないと思います」と答えが返ってきた。「『万引き家族』は、多くの人から僕の集大成的作品だと言われるけど、自分のなかで“集大成感”はまったくなくて。むしろ今回、新しいカメラマン(近藤龍人)と組んだり、安藤さんや松岡さんに入ってもらったりと、自分としては初めての試みをした感覚が現場では強かったです。ただ、10年以上撮ってきた家族というモチーフがいろいろと形を変えて反復されている部分もあるでしょうし、そういう意味では、将来的にそういう位置づけの作品になるのかもしれません」。

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