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ニック・パーク監督が語る、CG時代のストップモーション・アニメのあり方

2018年07月07日(土)配信

「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」など数多くの人気作を手掛けてきたアードマン・アニメーションズの最新作『アーリーマン~ダグと仲間のキックオフ!~』(公開中)。本作で初めて長編映画の単独監督を果たしたニック・パークといえば、クレイ・アニメーションの名手であり、昨今のストップモーション・アニメーションブームの先駆者的な存在だ。このたびパーク監督にインタビューし、CG全盛時代のストップモーション・アニメーションの変化、そして彼が長年にわたりタッグを組んできた、いまは亡き名優ピーター・サリスとの思い出について聞いた。本作で描かれるのは太古のむかし、原始部族の少年・ダグが暮らす谷に暴君ヌース卿が率いる軍隊が侵攻し、ダグと仲間たちは故郷を追われてしまう。なんとしても故郷を取り戻したいダグは“サッカー”と呼ばれるスポーツでヌース卿に対抗するべく、仲間たちとチームを作って特訓に励む。「制作にはトータルで8年もかかったけれど、企画段階がとても長く、脚本も何度も書き直した。ストーリーボードの構築に4、5年かかり、実際に撮影を始めてから18か月を経て完成したんだ」と、様々な紆余曲折があったことを明かすパーク監督。彼がその名を世界に轟かせたのは1990年。イギリスの国立映画テレビ学校の卒業制作として着手し、アードマンでパートタイムとして働きながら6年がかりで完成させた「ウォレスとグルミット」シリーズ1作目の『ウォレスとグルミット<チーズ・ホリデー>』(89)と連作「リップ・シンク」シリーズの1編『快適な生活』(89)の2本が世界中の映画祭で絶賛。日本でもその年の8月に行われた第3回広島国際アニメーションフェスティバルで上映され、拍手喝采を浴びた。そして2本そろって第63回アカデミー賞の短編アニメーション賞にノミネートされ、『快適な生活』が受賞を果たしたのだ。さらにパーク監督は「ウォレスとグルミット」シリーズの2作目『ウォレスとグルミット<ペンギンに気をつけろ>』(93)、3作目『ウォレスとグルミット、危機一髪!』(95)でもアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞し、05年には『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』で同賞の長編アニメーション賞に輝く。まさにストップモーション・アニメを語る上で欠かすことのできない作家なのだ。しかしパーク監督は「20年ぐらい前にCGが発達しはじめた。正直なところ、ストップモーション・アニメやクレイ・アニメがどのくらい続いていけるのかと心配していたんだ」と本音を語る。「でもウェス・アンダーソンやティム・バートンのような優れた作家やライカのようなスタジオが次々とストップモーション・アニメを作るようになって、本当に嬉しく思っている。とくに僕はウェス・アンダーソンの大ファンなんだ(笑)」。登場人物や背景をクレイ(粘土)でできたパペットで作り出し、1コマずつ撮影を重ね、長い時間をかけて1本の作品に仕上げていくクレイ・アニメは、極めて実写映画に近いアニメーションといえる。90年代以降、急激に映画界にCG技術が浸透していくなかで、パーク監督が選んだ方法は積極的にCGを取り入れることだったという。「アードマン全体でも早い段階からCGを取り入れていったんだ。はじめはテレビCM用の作品を作るなかで使いはじめ、霧や水、火のようなクレイでは作れない要素をCGで作るようになった。『チキンラン』や『野菜畑で大ピンチ!』でもCGは使ったし、その後『マウス・タウン』や『アーサー・クリスマスの大冒険』ではフルCGアニメを作るようにもなった」。そう語るパーク監督は、今回の『アーリーマン』の大きな秘密をひとつ教えてくれた。「実はほぼ全部のカットで、なんらかの形でCGを使っているんだ」。「火山が登場する背景にエフェクトを出すために使ったり、スタジアムの5万人の群衆を作ったり、画面に映り込んだ余計なものを消すためのツールとしても使用している。作業的にはCGのおかげで楽になった部分がたくさんあるよ」。そして「でも従来から大事にしてきた“手作り感”を守りたかったので、あまりCGが目立ちすぎないように、ちょっと効果を出す程度にした」と、最新のCG技術と往年のクレイ・アニメの技術、それぞれの魅力やメリットを共存させていくアニメ作りを心がけていることをうかがわせた。パーク監督の代表作でもある「ウォレスとグルミット」シリーズは、『ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢』(08)とその後10年にBBCで放送されたテレビシリーズ以降制作されていない。長年ウォレスの声を担当してきた名優ピーター・サリスが健康上の理由で2010年に俳優を引退し、昨年6月2日に96歳でこの世を去った。「ピーターと一緒に仕事ができたことは、本当に光栄に思っている」と語るパーク監督の声は、様々な想いが込みあげてきたようで少し震えていた。「いまでもはっきりと覚えているのは『ペンギンに気をつけろ』のプレスコ(先にセリフを収録し、その演技に基づいてアニメーションを作成すること)の時、クライマックスの汽車を追いかけるシーンの脚本とストーリーボードを見せても彼はよく理解できなかったようで、文句を言いながら収録に臨んだんだ。でも僕は彼に言った。『僕を信用してください』って。そしてプレミア上映の時、拍手喝采の会場でピーターは、僕を見つけると満面の笑みで親指を立ててくれたんだ」。ウォレスというキャラクターは、自身の父親を投影させた思い入れの深い存在だと公言しているパーク監督。それゆえに、命を吹き込んでくれたピーターへの思いは格別なようだ。「彼はとてもひょうきんで話し上手な人だった。独特の声質やクオリティをウォレスにもたらしてくれて本当に感謝している」と敬意と深い感謝の念を表し、「ピーターの後継者を見つけるのは簡単なことではない。でも、できることなら『ウォレスとグルミット』は今後も続けていきたいと思っているよ」と続けた。今後も世界中のアニメファンに新たな驚きをもたらしてくれることだろう。

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