映画作品映画館映画ニュース マイページ

趣里「過去があっていまがある」挫折も糧となった飛躍の1年を語る

2018年11月07日(水)配信

18年、鮮烈な印象を残した女優の一人と言える趣里。TBSドラマ「ブラックペアン」のクールな看護師“ねこちゃん”こと猫田役も話題となった彼女が、映画『生きてるだけで、愛。』(11月9日公開)では、鬱が招く過眠症で引きこもり状態のヒロイン・寧子(やすこ)を演じた。寧子のもがきを大胆かつ繊細に表現し、難役を演じきったいま、趣里は「過去の挫折があったからこそ、演じることができた役。過去の自分と向き合うことはつらいことでもあるけれど、そのすべてがいまに繋がっているんだと思うと“諦めちゃいけないんだ”と感じることができました」とまぶしいほどの充実した表情を見せる。過去の挫折、そして飛躍の年となった18年について胸の内を明かしてもらった。■ 身も心もさらけだす難役「絶対にやりたいと思った」原作は、劇作家・小説家の本谷が06年に発表した同名小説。メンタルに問題を抱え、バイトも満足に続かない寧子は、敷きっぱなしの布団の上で寝てばかり。同棲中の津奈木(菅田将暉)に理不尽な感情をぶつけながらも、わかってほしいと願うなど、自身をコントロールできない寧子の葛藤を赤裸々に描く物語だ。まっすぐすぎるがゆえにエキセントリックな言動に走ってしまう寧子は、とんでもなく面倒臭い女に見えながらも、どこか共感を呼ぶような女性。趣里自身も「共感できるところがあった」そうで、「自分自身のことも客観的にわかっていながら、自分を変えることができない。それでも明日に向けてがんばろうとするところなど、すごく共感できて。他人事とは思えない気がしました」と脚本を読み、大きく心を揺さぶられたそう。とはいえ怒り、泣き、叫ぶなど、身も心もさらけだす必要のある難役。飛び込むには覚悟も要するような役だが、「絶対にやりたいと思った」と力強く語る。「寧子役を通して、“自分がなぜお芝居をやっているのか?”という根本に立ち返ることができると思いました。私はこれまで、“エンタテインメントに救われた”と思うことが何度かありました。だからこそ“自分が関わる作品でエンタテインメントの持つ力を感じていただけたら”との思いで、お芝居をやっています」と女優としての原動力を明かし、「寧子のもがきを表現するためには、自分の過去のつらかった経験とも向き合わないといけない。それは苦しいことになるなとは思いつつも、逃げてはいけないと思ったんです」と情熱と共に決心したという。■ バレエを怪我で断念…過去の挫折も「すべてがいまにつながっている。諦めちゃいけない」「人生って、みんな大変ですものね」と微笑みながら、「私にも思い出したくない感情や、しまっておきたい過去があって」というように、趣里が「過去の挫折」と話すのが、4歳からはじめたバレリーナへの夢を怪我で断念した経験だ。英国留学も果たし、バレエ漬けの生活を送っていただけに「一瞬にして夢がなくなってしまった」と目の前が真っ暗になってしまったとか。「一番つらかった時に岩松了さんの舞台を見て、お芝居の力ってすばらしいと思ったのが、このお仕事を目指したきっかけです」。しかし、そのもがき自体も活かせるのが女優という仕事だ。「自分の体のことは自分が一番よくわかっているから、“もう無理だな”と思いながらもがんばろうとしている当時の自分が、すごく寧子と重なったんです。だからこそ、こんなにも寧子に惹かれたのかなと思います。役作りの過程では、寧子と共に過去の自分とも向き合えました。次に進むためにも、きちんと向き合えてよかったなと思っています」とキッパリ。「当時は本当につらかったけれど、すべてがいまに繋がっているんだと思うと、寧子を通して“諦めちゃいけないんだ”と感じることができました。いま考えると必要なことだったんだなって思えました」とさらに前進する力をもらった。■ 菅田将暉のギターに癒された!撮影現場秘話「生きているだけで、なんでこんなに疲れるんだろう」とつぶやくほど問題を抱えた寧子を演じている期間は「さぞ大変だったのでは」と想像するが、趣里は「ものすごく楽しかったんですよ!」と意外な回答。「過去の自分に向き合う期間はつらかったけれど、撮影前に、これまでの苦しかった経験など、たくさん監督とお話をさせていただきました。共演者の皆さんも、身を委ねていればいいと頼れる方ばかりでした」とものづくりの喜びを感じられる現場だったと話す。服を脱ぎ捨てながら疾走し、たどり着いた屋上で寧子が自身の感情を訴えるシーンは、凍えるような寒さのなかでの撮影だったとか。その時間は、現場の一体感をたっぷりと感じられるひと時でもあったという。「あのシーンはものすごく時間もかかったし、とても寒かったんです。その日は菅田くんがギターを持って来ていて、撮影の合間には歌ったりしてこちらの気持ちも暖めてくれました。私は裸足だったので、菅田くんが小道具のカバンを持ってきてくれて、それを足の下に敷いてくれたんです。でもそのカバンもとても冷たくて(笑)!」。■ ねこちゃんの反響の大きさにびっくり。バレエで磨いた表現力今年はTBSドラマ「ブラックペアン」の“ねこちゃん”こと猫田役も話題に。「ほとんどセリフがない役だったので、その場で彼女がなにを考えてるのかをしっかりと考えて演じる必要がありました。ただそこにいるだけになってしまっては、意味がないですから。ものすごく考えましたね」と真摯に挑んだが、目や体全体からもキャラクターの感情がにじみでる確かな表現力は彼女の大きな武器。バレエで培われたものなのかと問うてみると「空間の考え方や立ち方など、バレエがいまの自分にとって役立っていると思うと、すごくうれしいんです」。「でもこんなに“ねこちゃん”が反響をいただけるとは思っていなくて!」と反響の大きさにはびっくり。「ブラックペアン」の現場も「現場の空気がすごくよかった。皆さんからもらうものがたくさんありました」と『生きてるだけで、愛。』と同じように、「一人じゃない」と実感するような現場だったそう。「今年は“みんなでものづくりをしているんだ”という感覚を大きく得られた1年でした。もう少し若い時は、自分のほうに目が行き過ぎていたかもしれません。年齢を重ねるごとに、周囲も見渡せるようになって、“一人じゃないんだ、相手と一緒にやっているんだ”と実感できるようになってきた気がします」とニッコリ。「このようなタイミングで寧子という役に出会えて、本当に幸せです」と確かな足取りで女優道をひた走る趣里のこれからに、ますます期待したい。

【Movieウォーカー for SPmode TOPへ】